九州ええもん見っけ隊
(更新)
鹿児島のオイスターマイスターが選ぶ肉厚な吊るし牡蠣を、佐賀 天山の鋭いキレで迎え撃つ

今回は、鹿児島県霧島市の「かき小屋 匠ちゃん」がその品質に太鼓判を押す宮城県産「吊るし牡蠣(阿部晃也氏作)」。
そして、佐賀県小城市で150年の歴史を刻む天山酒造の怪物銘柄「天山 しぼりたて 生」です。
北の海が育んだ生命の輝きと、西の蔵が醸した力強い雫。
この二つが食卓で出会うとき、冬の味覚は一つの完成形を迎えます。
鹿児島県内初のオイスターマイスター(No.1210000039)が営む「かき小屋 匠ちゃん」。
店主が「世界の牡蠣学会」の承認基準で選び抜いたのは、奥松島の若き漁師が手がける、宝石のように美しい牡蠣です。
この牡蠣を唯一無二の存在にしているのが、「シングルシード方式」というこだわりの養殖法です。
通常、牡蠣は塊のまま育てられますが、阿部氏は種牡蠣の段階から一つひとつをバラバラの「個」としてネットに入れ、潮通しの良い汽水域に吊るして育て上げます。
周囲の個体と栄養を奪い合うことがないため、牡蠣は全方向からプランクトンを吸収し、驚くほど肉厚に成長します。
さらに、波の揺らぎで個体同士が優しく擦れ合うことで、殻が深く厚い「カップ」を形成。
この深いカップこそが、濃厚なエキスを余さず蓄える貯蔵庫となります。
若々しい「1年物」でありながら、加熱しても身が縮まず、ピュアな甘みがパンパンに詰まっているのは、この手間暇を惜しまぬ「個」への教育の賜物です。

この力強い海の幸を迎え撃つのは、佐賀県小城市に構える天山酒造の傑作です。
「酒造りは米作りから」という信念のもと、佐賀の風土を液体に封じ込めるその姿勢は、まさに職人の矜持そのもの。
今回合わせた「天山 しぼりたて 生」は、一切の加熱処理を行わない生原酒です。
アルコール度数は19度。秀峰・天山の中腹から湧き出る「中硬水」の伏流水で仕込まれたこの酒は、グラスに注いだ瞬間、林檎を思わせる瑞々しくも鮮烈な香りが立ち上がります。
一口含めば、生原酒特有の濃厚なコクと、中硬水由来の骨太でシャープなキレが共存しており、冬にしか味わえない圧倒的なエネルギーを放っています。

殻を開けると、深いカップの中に、ぷりっとした肉厚な身が隙間なく詰まっています。
マイスターが認めた鮮度をそのまま味わうべく、今回は生で。
一口で啜り込むと、まず感じるのは圧倒的なエキスの量です。
1年物とは思えないほど濃厚な海のミルクが溢れ出しますが、汽水域育ち特有の透明感があり、エグみや磯臭さは一切感じません。
噛み締めるたびにシングルシードらしい牡蠣の弾力が弾け、純度の高い甘みが舌の上に残ります。
そこへ、冷やした「天山 しぼりたて 生」を流し込みます。
19度という高アルコールの重みが、牡蠣の濃密な脂質を真正面から受け止めます。
生牡蠣のミネラル感と酒の酸が合わさることで、単体で食べるよりも旨味の輪郭がはっきりと浮き上がってくる。
そして何より印象的なのが、その後の引き際の良さです。
天山の中硬水仕込みが生む鋭いキレが、口の中に残った牡蠣の濃厚な余韻を、一瞬で鮮やかに掃き清めていきます。
重厚な旨味を堪能したはずなのに、後味は驚くほど清涼。この「濃密な衝突」と「爽快なリセット」の繰り返しが、次の一口を強烈に促します。
北の海で磨かれた牡蠣の生命力と、佐賀の風土が凝縮された原酒。
この二つを引き合わせた瞬間に完成する、冬の食卓の到達点。
これは、単なる食事を超えた、職人たちのこだわりを五感で受け止める贅沢な時間でした。
かき小屋 匠ちゃん
所在地:鹿児島県霧島市国分川内513-1
電 話:0995-73-8879
ジャンル:各種牡蠣・魚介類・黒毛和牛・各種定食
アクセス:東九州自動車道国分ICより2.4km
営業時間:11:00~15:00 ランチ
17:00~22:00 ディナー
定休日:不定休
備考:店内営業・地方発送
天山酒造株式会社
所在地:佐賀県小城市小城町大字岩蔵1520番地
電 話:0952-73-3141
ジャンル:清酒、焼酎、リキュール製造販売
アクセス:長崎自動車道小城スマートICより2.5km
備考:オンラインストア
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